クイズ王の部屋

早押しクイズに本当の意味での幅広い知識はあり得ない。

クイズ界では、オープン大会やサークル等で問題を出題するにあたって、ジャンルが偏ってはいけないという不文律がある(もちろん例外はあるが)。
特定のジャンルに強い人が有利すぎるのはよくないので、そのようになったのだろう。

例えば、クイズサークルの1回の例会で、三国志ネタを4問出題したとする。かなりの確率で「今日は三国志問題が多いな」とつっこまれるはずだ。
「仮面ライダー」だったら、3問で、ひょっとしたら2問で、「また仮面ライダーか」とつっこまれるだろう。

では、「○○の問題が多いなあ」などとつっこまれたりはしない、ジャンルのバランスがいいとされている大会・例会の問題群は、知識として偏りがないといえるだろうか。
実はそうとは言い切れない。例えば長文クイズの場合、問題文中に第1回受賞者や初代会長、命名者などが出てくる問題がやたらと多かったりする。
文学・歴史、科学、芸能・音楽、~という分類で見たらバランスがよくても、違う角度から見たら偏っていることがあるのだ。

「科学」「スポーツ」は特に問題の傾向が偏りやすいジャンルだ。どうしても同じ切り口の問題ばかり作ってしまうという人も多いだろう。
そういえば、文系のクイズ屋で、科学の自作問題は「~賞を受賞した」とか「法則に~とともに名を残す」みたいなのばっかりになってしまうと言っている人がいたような気がする。でもそれは仕方のない事だ。理系の人だって様々な切り口の問題を作るのは難しいのだから。

そもそもクイズ界で主流になっているクイズ、すなわち早押しクイズで、本当の意味での幅広い知識を問うのは不可能なのだ。

早押しクイズの問題文には、通常の日本語の文章とは異なる独特の型がある。時々、日本語として美しくないなどと批判されることがあるが、それは、解答者をミスリードしないように工夫がなされているがゆえに変な日本語になってしまっているのだ。早押し問題も見慣れれば、それなりの様式美を感じ取れなくもない。

世の中には森羅万象、様々なネタがころがっているのだが、すべてのネタが早押しクイズに還元できるわけではない。早押しにしやすいネタとしにくいネタがあるのだ。
いくらその筋で有名であっても、早押しクイズにはほとんど出題されないという知識はいくらでもある。
クイズ屋が早押し問題を作る時、どこからかネタを拾ってくるわけだが、慣れてくると、問題文化しにくいネタは無意識に排除するようになる。クイズ屋にとって、早押しクイズになりにくいネタは知識として重要ではないのである。
逆に、早押しクイズの問題文にしやすい知識は、その分野においてはどうでもいいようなネタであっても、よく出題されるということがある。(この場合の「出題される」というのは、答えとしてだけでなく、問題文中に出てくるというのも含む)

例えば、命名者、最高峰、本名などは、早押しクイズの問題文に頻繁に登場する。ひと口に島の最高峰といっても、有名なものとそうでないものがあるが、クイズ屋はそれを区別しない。
もちろんクイズ屋の中にも、その筋で有名・重要であるかを重視する人はたくさんいるが、それらのクイズ屋の大部分は、どういうわけか本名や最高峰などについては、有名かどうかを考えずに問題文中に組み込んでいる。

その筋で有名かどうかを気にする人が、命名者や初代会長、第1回受賞などの分かりやすいネタだと無条件に採用するさまは滑稽ではあるが、早押しクイズの問題文はその構造上、知識を幅広く問うことは難しいので、作りやすい切り口のネタに偏るのは当然だ。

クイズで真に幅広く、偏りのない知識を問おうとすれば、早押しではなく、学校のテストみたいな感じの筆記(ジャンルは森羅万象あらゆる物事)にしなければならない。
そんなクイズをやりたいと思う人はいないだろう。(得意なジャンルだけだったらやってみたいという人は多いだろうけど)
人は、脳に負担のかかることはしたくないのである。


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